霊長類研究 Supplement
第34回日本霊長類学会大会
セッションID: A24
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口頭発表
兵庫県北部に生息するニホンザル絶滅危惧群の長距離移動とその後 ~ニホンザル広域管理の必要性について~
*森光 由樹山端 直人鈴木 克哉
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抄録

ニホンザルの群れが長距離移動する事例は,これまでいくつかの地域で観察されている。兵庫県北部に生息している,美方A群が約35kmの長距離を移動したので,その要因と今後の問題点について報告する。兵庫県北部の群れは美方A群を含めて3群のみが生息している。すべての群れが農業被害を起こす群れで水稲,夏野菜などに被害がある。2016年の美方A群の個体数調査では15頭で,そのうち成獣メスは5頭のみで絶滅が危惧されている。被害防除しながら絶滅を防止することが求められている群れである。兵庫県と香美町は,有害駆除捕獲を制限し,サル監視員による群れの監視と追い払い(365日)及び,サルに効果的な電気柵を普及させた。サル監視員による農地やその周辺での年間の目視率は,2012年50%であったが,2016年15%まで減少した。2017年7月中旬に生息地から群れが突如不明となり,その後,電波発信器の発信や聞き取り調査で情報収集が行われたが,群れの確認はできなかった。2017年9月に鳥取県八頭町で電波発信器を装着した群れの情報があり長距離移動が確認された。群れは長距離移動した新たな地域で,果樹や野菜に農業被害を発生させている。移動ルートの氷ノ山は広葉樹林帯であるが,定着することは無かった。群れが移動した要因は,被害対策が進みサルが農作物を採食することが困難になったことが考えられた。兵庫県ではニホンザル特定鳥獣管理計画が策定され,保全と管理が進められている。しかし隣接する鳥取県では特定鳥獣管理計画の策定はなく,また,八頭町では,有害駆除が積極的に進められていて,電気柵などを用いた被害防除は普及していない。兵庫県,鳥取県,岡山県に生息しているニホンザルの分布は少なくそれぞれ孤立しており,保全上,重要な地域であると考えられる。今後,地域絶滅が危惧されていて広域管理が必要である。

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© 2018 日本霊長類学会
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