主催: 日本霊長類学会
会議名: 日本霊長類学会大会
回次: 34
開催地: 東京都
開催日: 2018/07/13 - 2018/07/15
多くの新世界ザル種はL/MオプシンのX染色体一座位遺伝子多型によって,色覚多型を有している。その中でホエザル属は唯一,遺伝子重複により縦列したL及びMオプシン遺伝子を同一X染色体上に有している。我々はこれまでに,ホエザルのL/Mオプシンには通常のL,Mオプシンとは吸収波長の異なるL/M hybrid遺伝子が高頻度に存在することを報告してきた。一方で,旧世界霊長類はホエザルと類似して縦列したL及びMオプシン遺伝子を有している。しかし旧世界霊長類におけるL/M hybrid遺伝子の存在は極めて稀であることが報告されている。我々はこれまでに,旧世界霊長類のテナガザル属において,遺伝子変換によるL-M遺伝子間の均質化に抗して,LとMオプシン間の吸収波長の相違が自然選択で維持されていることを示している。しかし,同様の均質化と自然選択がホエザルや他の旧世界霊長類でも起こっているかは不明だった。そこで,我々はホエザル及び様々な旧世界霊長類に対して,ターゲットキャプチャー法と次世代シーケンシングにより,イントロンを含めたL/M遺伝子領域を取得し,L-M間塩基相違度の解析を行った。旧世界霊長類に対して,ホエザルではイントロンを含め,LとMオプシン遺伝子の間の塩基相違は全体に高く,遺伝子変換による均質化は不明だった。また,その塩基相違の高さは,他の新世界ザルでのL/Mアリル間の塩基相違と類似していた。遺伝子変換による均質化が見られなかったにもかかわらずホエザル属は高頻度のL/M hybrid遺伝子を有している。このことから,ホエザル属では旧世界霊長類と異なり,他の新世界ザルと同様に,色覚の多様性をもたらす選択圧が働いていると考えられる。