主催: 日本霊長類学会
会議名: 日本霊長類学会大会
回次: 34
開催地: 東京都
開催日: 2018/07/13 - 2018/07/15
旧世界ザルには,種子や果実食傾向の強いオナガザル亜科,複雑な胃をもち葉食傾向の強いコロブス亜科が含まれる。一部の葉には毒性を示す二次代謝産物が含まれており,動物は苦味受容体(TAS2R)によりこれらの物質を検知して食物選択をしている。これまでに旧世界ザルを対象にした全苦味受容体遺伝子(TAS2R)の多様性解析を行った。その結果,コロブス亜科の多くのTAS2Rはオナガザル亜科と同様に保存的進化傾向を示す一方で,一部のTAS2Rは多様化していることが明らかになった。これまでの研究では生息地の異なる種間で比較を行っていたため,採食行動の違いと味覚の違いを直接的に比較することは困難であった。そこで本研究では,同所的に生息する旧世界ザルを対象にした苦味受容体遺伝子とその機能の種間比較を行うことで,味覚と採食行動の関係を直接的に比較した。ウガンダ共和国キバレ国立公園に同所的に生息する旧世界ザルを対象とした。これまでにベルベットモンキー(Chlorocebus aethiops),アカコロブス(Procolobus badius),アビシニアコロブス(Colobus guereza)のフンから抽出したDNAを用いて,約30種類の全苦味受容体遺伝子の配列を決定した。また,アカコロブスやアビシニアコロブスは,βグルコシドの一種で毒性の高い青酸配糖体を含む葉を食べることが報告されている。そのため,βグルコシドを受容するTAS2R16に着目して,細胞アッセイによる受容体機能解析を行った。βグルコシドの一種であるサリシンに対するTAS2R16の反応性を調べたところ,アビシニアコロブスのTAS2R16はアカコロブスやベルベットモンキーに比べて,有意に反応性が低いことが明らかになった。3種における苦味受容体レパートリーおよびTAS2R16の反応性の多様性について,3種における食性や消化能力の違いに着目して議論する。