霊長類研究 Supplement
第34回日本霊長類学会大会
セッションID: B04
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口頭発表
マカカ属の寛容性とCOMT遺伝子の変異の関連
*井上 英治小島 梨紗山田 一憲大西 賢治中川 尚史村山 美穂
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抄録

ニホンザル(Macaca fuscata)は,マカカ属の中で,優劣スタイルが厳しい専制型に分類されているが,寛容性の程度には種内差がある。寛容性に影響する遺伝子の候補として,本研究では,カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)遺伝子に着目した。ヒトではCOMT遺伝子のexon4のSNPがAアレルである場合,社会的なストレスを感じやすいことが示唆されている。また,最近,飼育ニホンザル集団において,intron4にSNPがあり,Tアレルを持つ個体の方が,ストレスを受けやすいことが報告されている。本研究では,COMT遺伝子の種内差および種間差が寛容性に与える影響について解析した。寛容性が高い集団(淡路島,小豆島,屋久島)と,寛容性が低い集団(金華山,嵐山,勝山,幸島),計7集団のニホンザルDNAサンプルを用いて,COMT遺伝子の塩基配列の一部を決定した。また,他の狭鼻猿類の変異について,データベースに登録のある配列で確認した。ニホンザルの塩基配列を決定した結果,ヒトで変異が報告されているexon4のSNP部位は,解析したすべてのニホンザルでAであることがわかった。データベースを確認したところ,他の多くの狭鼻猿類がTであるのに対し,アカゲザルでもAであることから,専制的なマカカ属では,ヒトにおいて社会的なストレスを感じやすいとされているAアレルを持っていると考えられる。また,先行研究でストレスとの関連が報告されているintron4のSNPについて,金華山・嵐山ではTが相対的に多く,勝山・幸島・淡路島・小豆島・屋久島ではTがほとんどないことがわかった。この結果から,寛容性が高い集団ではストレスを感じやすいとされるTアレルを持つ個体はほとんどいないが,Tアレルを持つ個体がいなかったとしても必ずしも寛容性が高くなるわけではないと考えられる。以上の結果は,COMT遺伝子の変異が,マカカ属の集団の寛容性に影響していることを示唆している。

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