霊長類研究 Supplement
第34回日本霊長類学会大会
セッションID: B15
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口頭発表
野生のヒヒを対象とした,新しい警戒指標を用いた集団サイズ効果の検証
*松本 晶子岡本 光平高橋 健太大平 英樹
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抄録

目的:動物にとって,警戒は捕食動物の検出を促進する重要な手段である。理論的には,より大きなグループに属する個体は,より多くの仲間が周囲を見ているので,長い距離またはより早い時期に捕食者を検出することができる。同時に,集団内の個体は,他の仲間に頼って個々の警戒を減らすこともできる。この「集団サイズ効果」は多くの鳥類およびほ乳動物において実証されているが,霊長類ではほとんど支持されていない。その理由のひとつに,警戒の定義や方法の不統一が挙げられていることから,われわれは新たな警戒指標を提案し,群サイズ効果を検証する。(予想1)集団の周辺部に位置する個体は,中心部に位置する個体よりも危険にさらされるため,より警戒する必要がある。(予測2)小さな集団に属する個体は,大きな集団の個体よりも危険にさらされるため,より警戒する必要がある。方法:平均的な捕食圧を受けている,ケニア共和国に生息する野生ヒヒ(Papio anubis)の1集団を対象とした。顔の動画を撮影し,目が明いている持続時間と目を閉じている持続時間の長さを0.01秒単位で計測した。結果:(結果1)周辺部に位置する傾向の高いワカモノオスは,目を開けている時間が有意に長かった。(結果2)小さなサイズの時期のオトナオスは,大きなサイズのオトナオスより目を開けている時間が有意に長かった。考察:本研究は,予想1と2の両方を支持した。このことから,目が開いている持続時間はおそらく霊長類の警戒行動として信頼できる指標になることが示唆された。

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© 2018 日本霊長類学会
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