霊長類研究 Supplement
第34回日本霊長類学会大会
セッションID: B17
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口頭発表
チンパンジーのタワー利用-年齢による使用要素の違い
*堀田 里佳羽深 久夫
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抄録

飼育動物の環境エンリッチメントの一環として,樹上性類人猿施設へのタワーの導入が行われている。実際に動物がタワー空間をどのように利用しているかを明らかにするため,成長期の個体複数を含む飼育群がおり,タワーの高さ・ボリュームが大きい札幌市円山動物園のチンパンジータワーを対象に,動物が樹上行動で使用するタワー要素に着目した行動調査を行った。樹上運動(移動・ぶら下がりなどの大きな動き)における要素の使用回数について,まず年齢・時間帯・要素の形態別のコレスポンデンス分析によりおおまかな要素使用の傾向を把握し,次に樹上運動で同時に使用された要素の組合せを集計することにより,動物のタワー上での動線を年齢別に作図し可視化した。コレスポンデンス分析では,オトナ・コドモの朝・コドモの昼で,使用要素の傾向に明確な違いがあることがわかった。オトナは時間帯による差は小さく,上部デッキ・梁などの複合材・パイプ類の利用が多かった。コドモは朝と昼で大きな違いが有り,朝は下部ロープやネットを使用し地面と行き来する行動が多く,昼は上部のロープを使用した行動が多かった。3歳の幼児(チンパンジーの年齢区分ではアカンボウ)の昼の行動は,コドモの昼に近い要素使用の傾向を示していた。次に年齢別のタワー動線図から読み取れることとして以下のことがわかった。オトナの行動範囲は地面から最上部デッキまでの広範囲に渡り,デッキ・桟橋・梁・柱などの複合材を中心とした動線で結ばれていた。コドモの行動範囲は地面から高さ5.5mの水平梁までが中心で,行動基点となる高さ2.6mの水平パイプの他,ネットやパイプ・柱・ブランコなど多様な種類の要素を複雑に組み合わせて行動していた。3歳の幼児の動線はコドモに比べ単純で,行動範囲はむしろオトナと一致する部分が多かった。斜めに傾いた梯子状の桟橋は各年齢に共通して使用され,動線としての重要度が高かった。

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