霊長類研究 Supplement
第34回日本霊長類学会大会
セッションID: P03
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ポスター発表
ニシローランドゴリラにおけるワカオスの社会関係の発達変化
*坪川 桂子安藤 智恵子
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抄録

ニシローランドゴリラ(Gorilla gorilla gorilla)では,ほとんどのオスが完全な成熟に達する前に出自群を移出するが,その移出過程についての知見は未だ限られている。本研究は,ゴリラのワカオスが群れ内の個体との社会関係をどのように変化させて移出に至るのか明らかにすることを目的とした。調査はガボン共和国ムカラバ―ドゥドゥ国立公園において,2013年9月から2014年2月,および2015年8月から2016年2月にかけて,人づけされた単雄複雌群(G群)のワカオス8個体(推定年齢7~14才:サブアダルト,ブラックバック)を対象として実施した。直接観察により,採食,移動,休息時における他個体との近接関係,観察路などの道を横切る際の行例にしめる位置,他個体との攻撃交渉や遊び等の親和的社会交渉を記録した。その結果,ワカオスは年齢が高いほど群れから周辺化し,行列では先頭や最後尾に位置する傾向にあった。一方,休息時などにはワカオス同士が近接する様子が観察された。2015年には,移出年齢にある1個体のブラックバック(個体名:N2)が2回に渡りG群を離れて,それぞれ推定3週間と推定3カ月間を経て再びG群に合流した。また,調査期間中にはG群出自ではないブラックバック1個体(MI)が一時的にG群と遊動をともにするという事例が観察された。この事例では,MIはG群のワカオスたちと近接する傾向にあった。これらの観察結果から,ワカオスは年齢があがるにつれて群れから周辺化しつつ,ワカオスどうしは出自群の異同に関わらず互いに近接を許容しあう関係にあることが示唆された。マウンテンゴリラ(G. beringei beringei)では,約半数のワカオスが成熟後も出自群にとどまることが知られているが,本発表ではワカオスをとりまく社会関係という観点から,ゴリラ属のオスの生活史にこうした種間変異が見られることの一因を考察する。

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© 2018 日本霊長類学会
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