霊長類研究 Supplement
第34回日本霊長類学会大会
セッションID: P06
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ポスター発表
ガボン,ムカラバ–ドゥドゥ国立公園のニシローランドゴリラにおける,核オスの消失後の社会変動
*竹ノ下 祐二Etienne François AKOMO-OKOUÉ坪川 桂子藤田 志歩Ghislain Wilfried EBANG-ELLA田村 大也Lilian Brice MANGAMA-KOUMBAPatrice MAKOULOUTOUPaul Yannick BITOME-ESSO山極 寿一
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抄録

本発表では,ガボン,ムカラバ–ドゥドゥ国立公園(以下ムカラバ)で人づけされてきたゴリラの群れにおいて,核オスの消失後に残された群れの成員の動向を報告する。ムカラバでは2002年からジャンティ・グループ(G群)と名付けたゴリラの群れの追跡調査を行ってきたが,2016年10月に核オスが消失した。消失時点での群れのメンバーは,核オスを含め20頭で,核オス以外にシルバーバックはおらず,経産メスの子はすべて消失した核オスの遺伝的な子どもであることが確認されている。我々は最後に核オスが観察された2016年10月以降,同年11月,2017年1~3月,5月,8~12月,2018年1~4月にかけて野外調査を行い,G群の残存メンバーの探索と追跡を行った。その結果,(1) 核オスの消失後約2ヶ月間,ほぼすべての残存メンバーが遊動をともにした。(2) 2017年2月,2頭のメスが離乳前のアカンボウとコドモを伴って隣接群(M群)に移籍した。その結果,M群は未成熟個体のほとんどが核オスの子ではないという状況が生じた。(3) 2017年8月までに,さらに2頭のメスが別の隣接群(I群)に移籍した。その結果,残存メンバーは4頭のサブアダルトと1頭のメスおよびそのコドモという複雄単雌群的様相を呈した。(4) 2017年11月以降,年長のサブアダルト2頭が残存メンバーの集団を離脱した。(5) 2018年1月以降,サブアダルト2頭を含む残存メンバーがM群や,さらに別の隣接群に合流し,群れの構成を頻繁に変えながら遊動するようになった。本研究は,ニシローランドゴリラにおいて,核オス消失後の群れのメンバーのほぼ全個体の動向を1年以上に渡って詳細に追跡した貴重な事例であり,観察結果はニシローランドゴリラの社会がこれまで考えられていた以上に可塑的であることを示している。

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© 2018 日本霊長類学会
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