主催: 日本霊長類学会
会議名: 日本霊長類学会大会
回次: 34
開催地: 東京都
開催日: 2018/07/13 - 2018/07/15
ヤクシマザルについて,オトナメスやワカモノメスの抱擁行動はすでに報告されている(Nakagawa et al, 2015)が,コドモやアカンボウの抱擁行動については報告されていない。本研究は,オトナメスだけでなく,アカンボウやコドモを含めた個体間の抱擁行動を観察することで,アカンボウからオトナまでの抱擁行動の発達過程を明らかにすることを目的とした。屋久島西部地域において,終日追跡可能なUmi-A群を対象に2017年10月11日から2017年12月20日の間に調査を行い,オトナメス7頭,アカンボウ3頭の計10頭,総計238時間を個体追跡した。ただし個体追跡中,個体追跡していない個体同士が抱擁行動をするのを観察した時は,追跡個体よりも優先して抱擁直後の行動まで記録した。血縁個体は,血縁度が0.25以上である個体とした。個体追跡個体が含まれる抱擁行動が21例,非個体追跡個体間での抱擁行動が98例の全119例観察された。抱擁行動は,オトナ同士で26例(血縁関係:16例,非血縁関係:10例),オトナ-コドモで32例(血縁関係:25例,非血縁関係:7例),オトナ-アカンボウで8例(血縁関係:5例,非血縁関係:3例),コドモ同士12例(血縁関係:4例,非血縁関係:8例),コドモ-アカンボウで32例(血縁関係:21例,非血縁関係:10例,不明:1例),アカンボウ同士が9例すべてで非血縁関係であった。アカンボウの抱擁行動は10月にはすでに観察された。屋久島での出産期は3月から7月初旬である(Fooden et al, 2003)ことから,多く見積もっても7カ月齢で抱擁行動が見られたことになる。また,コドモ・アカンボウのみの抱擁行動が119例中53例,オトナ同士が26例であったこと,コドモやアカンボウでの抱擁行動で遊びの最中や泣いているアカンボウを慰めるなどオトナでは見られない文脈があったことから,オトナになるにつれて抱擁行動をする文脈が収斂されていくと考えられる。