霊長類研究 Supplement
第34回日本霊長類学会大会
セッションID: P09
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ポスター発表
幸島主群ニホンザルにおけるコドモの順位上昇の要因
*熊谷 美樹
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抄録

ニホンザル(Macaca fuscata)の順位形成については,放飼場群の行動観察による研究から生後かなり早い時期に母親の順位を継承していることが示されている。しかし,その対象群では人為的な個体の移動があるためコドモ期後期以降にどのように順位が維持されるのかは分かっていない。ニホンザルのコドモの順位はふつう母親のすぐ下になるが,予備観察から幸島主群のコドモ個体間にこれと異なる優劣関係がいくつか観察された。本研究では幸島主群ニホンザルのコドモ個体間の順位関係を敵対的交渉から調査し,順位の上昇の要因について考察を行う。幸島主群のコドモ個体18頭(1~4歳,メス10頭・オス8頭)を対象に2017年11月から2018年1月まで直接観察を実施した。対象個体間に起こった敵対的交渉を全生起サンプリングでデータ収集した。グリメイスした個体やサプラントされた個体を劣位者として,威嚇や攻撃を行った個体を優位者として記録した。順位の算出はADAGIOというアルゴリズムを用いて行った。その結果18頭中4頭で,母親の順位から推測されるものよりも高い順位が算出された。さらに攻撃や威嚇を含む交渉と含まない交渉に分けて順位を算出したところ,後者で順位が上昇していたのは1頭のみであったのに対し,前者では3頭見られた。このため順位上昇の多くは,攻撃・威嚇といった優位者側の直接的な行動を反映していると考えられる。順位の上昇が見られた4頭のうち3頭が4歳オス,残りの1頭は孤児の4歳メスであった。このように,群れ移出直前のオスや孤児といった,母親の影響を受けにくい個体ほど順位の上昇が起こりやすい傾向が見られた。母親の順位を反映していないことは,このような個体は母親との近接率が低いということが一因となっている可能性がある。加えて孤児に関しては,母親より順位の高い個体らとよく交渉しており,それらの援助によって順位が上昇していることが考えられる。

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