主催: 日本霊長類学会
会議名: 日本霊長類学会大会
回次: 34
開催地: 東京都
開催日: 2018/07/13 - 2018/07/15
これまで,ニホンザルの遊動域は,主に群れサイズと食資源量によって規定するとされてきた。しかし,複数の群れが隣接する地域において,長期間持続的にとり続けたデータをもとに,複数群の遊動域面積に影響する要因を経年的に追及した研究は少ない。また,群れ間に保たれている距離など群間関係について詳細は明らかにされていない。本研究では,群れサイズ,群れ内のオトナメスの頭数,土地利用別面積割合に着目し,遊動域面積との関係性を検証した。土地利用区分は広葉樹林,針葉樹林,耕作地,市街地,その他とした。また,GISで隣接群との群間距離を計測することで群間関係の実態の一部を明らかにすることを目的とした。群れは神奈川県丹沢地域に生息する鳶尾群・経ヶ岳群・煤ヶ谷群であり,2007~2016年度の神奈川県ニホンザル生息状況調査の調査結果を用いて解析した。ステップワイズ重回帰分析の結果,夏季では群れサイズ,広葉樹林面積割合が遊動域面積の説明変数として採用された。また,夏季・冬季において最も面積割合が高かった広葉樹林は,耕作地面積割合と負の相関を示した。よって,耕作地面積割合が減ると広葉樹林面積割合が増え,群れサイズが縮小することで遊動域面積は小さくなる傾向がみられた。さらに,3群それぞれに経年変化を示した遊動域面積を,その時々の群れサイズを階級分けして比較した結果,遊動域面積に有意差がみられた群れサイズは群れによって異なった。よって,群れごとに遊動域面積に影響する群れサイズは異なり,ある一定数以上のサイズになると遊動域面積は拡大する傾向がみられた。また,群間関係については,群間距離は群れ間によって異なったが,全て1km以上であった。群間距離は,群れ間の優劣の差により,隣接群の遊動域にどれほど進出するか,また侵入された群れは回避するかによって異なると考えられたが,それとは別に共通した最低限の群間距離がある可能性が示唆された。