主催: 日本霊長類学会
会議名: 日本霊長類学会大会
回次: 34
開催地: 東京都
開催日: 2018/07/13 - 2018/07/15
個体追跡中に取得した行動データを観察者が携帯するGPS測位値と対応させることにより,観察個体の遊動中の活動を詳細に地図化することができる。さらに,複数個体の同時観察から取得したGPS測位値を利用して,個体間の配置や距離を計算し,社会生態学的分析に活用することが可能になる。しかし,数値としての距離などのデータのみでは,各観察個体が具体的に遊動域内のどのような領域を遊動していたかは分析の対象にならない。遊動域と関連づけるためには,個体間距離などを地図データと関連づける必要がある。本研究では,鹿児島県屋久島に生息するニホンザルを調査対象として行った2個体同時追跡中に観察者が取得したGPS測位値と活動データから,GISソフトに備えられている地図化機能を活用して,移動中の2個体の個体間距離とその他要因との関連性を地図上に可視化した。調査はオトナメス6頭を対象に行い,順位や家系が異なる15組で,観察者がそれぞれの個体の終日個体追跡を実施することによってデータを取得した。個体間距離は1分毎の同時点における2個体間の直線距離として計算し,地図上の各個体の観察地点と対応させた。これにより,個体間距離が長い場合や短い場合における各個体の観察地点の分布をマップ化した。また,同時点における個体同士の位置関係を明示しながら,家系,活動,地形と個体間距離の関連性を地図上に表せるようになった。同一家系の個体は個体間距離がより短い傾向があるので,地図上でも同一家系個体同士の活動は凝縮して見られた。一方で,異なる家系の個体間では個体間距離はより長い傾向があり,また,同一家系であっても個体間距離が長くなる場合もあった。この様な場合では観察個体同士が遊動域の外縁にも及ぶ遠く隔てる状況を地図上に見ることができた。