霊長類研究 Supplement
第34回日本霊長類学会大会
セッションID: P17
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ポスター発表
高崎山ニホンザルにおける母親による子への食物強奪行動
*栗田 博之
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抄録

哺乳類の乳幼児は,身体接触の快感や母乳などを求めて母親に頻繁に接触する。しかし,乳幼児が望まない行動を母親がとる場合,母子間の身体接触はどのように成し遂げられているのだろうか。ニホンザルでは,未成熟個体の頬袋から食物を強奪する行動が銚子渓,嵐山,高崎山,金華山で確認されているが,高崎山では,数頭の母親が実子である乳幼児の口から食物を奪って食べる行動を頻繁に行う。本研究では,高崎山の2組の母子を対象として,母と子のどちらが相手に近寄るのか,そしてその食物強奪行動との関係を調べた。観察対象は,高崎山餌付けC群(836頭)の11歳雌「プリン」とその2008年生の子「プリン08」,推定12歳の雌「ペンダコ」とその2008年生の子「ペンダコ08」である。なお,プリン08は右半身の毛が抜けて識別が容易であり,プリン08,プリン,ペンダコの3個体の行動を,午前10時から午後1時まで,個体追跡法により観察した。調査期間は2008年12月からの一年間(2個体の子にとって0.5~1.5歳に相当)とし,プリンとペンダコの追跡は2週間に一度,プリン08の追跡は1か月に一度行った。個体Aがその接近により,個体Bを中心とした半径1mの円を横切ったとき,「個体Aが個体Bに接近した」と定義した。記録した項目は,母と子のどちらがもう一方に接近したかとその食物強奪行動との関係についてである。ただし,小麦拾い中の接近は記録しなかった。その結果,小麦拾い後から食物強奪が起きるまでの間の接近は,3個体のいずれの追跡においても89~94%は母による接近であったのに対し,食物強奪が起きてから小麦拾いまでの間は,3個体のいずれの追跡においても80~84%は子による接近であった。これらの結果は,子の口や頬袋の中に小麦がある間は,子から母に近づくことはあまりなく,専ら母が子に近づいて小麦を強奪するが,子の口や頬袋から小麦がなくなると,母の方からでなく,専ら子が母に近づいていたことを示している。

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© 2018 日本霊長類学会
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