主催: 日本霊長類学会
会議名: 日本霊長類学会大会
回次: 34
開催地: 東京都
開催日: 2018/07/13 - 2018/07/15
Inoue and Matsuzawa(2007)で示されたチンパンジーにおける優れた作業記憶能力が,同じヒト科の近縁種であるニシゴリラ(Gorilla gorilla)においてどの程度見られるかを,チンパンジーと同様の課題において調べた。対象としたのは,京都市動物園で飼育されているニシゴリラ1個体(愛称:ゲンタロウ,2011年12月21日生,男)で,両親とともに3個体で暮らしている。研究は,ゴリラ舎屋内に設けられた多目的居室で行った。室内は15in.タッチモニターが壁面に固定され,万能給餌器とともにノートPCによりコントロールした。課題はアラビア数字を刺激とする系列学習課題であり,画面上に設けられた4列3段の12のセルにランダムに提示され数字を,小さい順に触れていき,すべての数字に触れることが強化された。触れる順序を間違えると画面がブラックアウトし,初期画面に戻された。数字は1から9までの一桁の数字からランダムに選ばれた4個,5個,6個の数字を用いて,最も小さい数字に触れたときに残りの数字がすべて市松模様で隠されるマスク条件と,隠されない非マスク条件の3×2条件で分散分析を行い,正反応数を比較した。1セッションは42試行とし,各条件20セッション行った。結果から,アラビア数字の個数によらず,非マスク条件がマスク条件に比べて成績がよかった。非マスク条件では,画面上の数字が4個と5個では成績に有意差はなく(77%と76%),6個のとき他の2条件と比べて有意に低下した(71%)。マスク条件では,4個(61%),5個(53%),6個(35%)と画面上の数字が増えるほど成績が下がり,各条件間で有意差が見られた。また,マスク条件では訓練効果も見られなかった。ニシゴリラで見られた成績は,6数字のマスク条件においても,ランダムに数字を選択して正反応が得られる期待値(0.1%)よりもはるかに高く,高い作業記憶能力を持っていることが示唆された。