霊長類研究 Supplement
第34回日本霊長類学会大会
セッションID: P30
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ポスター発表
京都市動物園の老齢アカゲザルにおける滞在場所と気象との関連-冬季における経過報告
*櫻庭 陽子伊藤 二三夫板東 はるな田中 正之
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抄録

国内の動物園では飼育動物の高齢化が進んでおり,老齢個体の福祉の議論は急務である。Waittら(2010)は,飼育下霊長類の老齢個体に関しては自律性体温調節機能が低下しているため,周囲の温度環境に配慮すべきであると指針を出している。京都市動物園で飼育しているアカゲザル19個体のうち,24~40歳の 4個体は別施設で飼育しており,夏季・冬季では,屋外と空調設備が整っている屋内を行き来できるよう配慮している。この取り組みの評価を試みるため,本発表では経過報告として,冬季における老齢アカゲザルがどのような気象条件でどのような場所を選択しているかを分析した。対象個体は,オス1個体,メス3個体で,観察は15分毎に個体を変えて,目視で1分毎のフォーカルサンプリング,午前・午後2時間ずつ各個体の行動と滞在場所を記録した。観察期間は2017年12月18日~2018年3月14日のうち16日間のデータを取得した。滞在場所は屋内と屋外とした。気象情報は気象庁ホームページに情報があがっている京都の過去の天気から,10分毎の気温,湿度,日照時間,風速の情報を取得し,気温・湿度・風速から体感温度を計算した。気温,体感温度,日照時間を固定効果,個体をランダム効果とし,一般化線形混合モデルを用いてAICの値を比較した。結果,AICの値が低い3モデルにはいずれも日照時間が要因として含まれ,日照時間が長いほど屋外を選択している傾向が見られた。また日照時間が長い日には,屋外でグルーミングもよく見られた。このことから,冬季において晴れている日は寒くても屋外を選択し,またコミュニケーションの場として屋外を利用していることが考えられ,老齢個体においても屋内と屋外を行き来できるようにすることは重要だと考えられる。今後は本データを基に,夏季との比較,環境エンリッチメントの実施及びその前後との比較,他個体との比較等により,老齢個体の福祉に関する議論を展開していきたい。

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© 2018 日本霊長類学会
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