霊長類研究 Supplement
第34回日本霊長類学会大会
セッションID: P31
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ポスター発表
ヒト,シロテテナガザル,ニホンザル二足歩行時の体幹回旋角度の比較
*木下 勇貴後藤 遼佑中野 良彦
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抄録

ヒトは歩行時,骨盤と胸郭を体幹長軸回りに相対的に回旋させる。この回旋は二足歩行に適応した身体を有するヒトに特有なものと考えられてきた。しかし,胸郭と骨盤の間のスペースが少なく腰部が短いチンパンジーにも,骨盤と胸郭の相対的な回旋メカニズムが存在することが明らかにされた(Thompson et al., 2015)。このことは他の霊長類種においても同様の回旋メカニズムが存在することを示唆する。もし,ヒトとチンパンジー以外の種に相対的回旋が見られないなら,この動きはヒト科特有の特徴かもしれない。一方,もし他の種にも同様の動きが観察されるなら,相対的回旋は二足歩行というロコモーションの力学的要請によるものと考えられる。こうした疑問へのアプローチとして,シロテテナガザルとニホンザルの二足歩行時の体幹回旋角度を計測し,ヒトを含めた3種間で比較した。実験協力者(被験体)には,ヒト(男性1名),シロテテナガザル(メス1個体),ニホンザル(オス2個体)を用いた。第5胸椎,第12胸椎(シロテテナガザルは第13胸椎),第3腰椎,仙骨の直上皮膚に貼付した実験用クラスターマーカーの三次元座標から,二足歩行時の胸郭中部,胸郭下部,腰部,および骨盤の回旋角度を求めた。各部の絶対的な回旋量は3種でばらつきがあり,いずれもシロテテナガザルが最大であった。また,ニホンザル2個体には個体差が認められた。しかし,骨盤に対する胸郭の相対的回旋がヒトだけでなくシロテテナガザルとニホンザルにも認められ,その回旋量は3種で同等であった。ヒトの二足歩行の特徴と考えられていた骨盤と胸郭の相対的回旋は,その体幹形態に関連した運動やヒト科の共有派生形質というよりも,二足歩行というロコモーションの力学的要請による動きであることが示唆された。

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© 2018 日本霊長類学会
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