霊長類研究 Supplement
第34回日本霊長類学会大会
セッションID: P32
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ポスター発表
高齢ワオキツネザルの社会活動性は低下するか?
*市野 進一郎Perline RANOMENJANAHARY
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抄録

老年学の離脱理論(Cumming & Henry, 1961)によると,加齢にともなう身体活動性低下の結果として,高齢者は社会活動から離れていくと考えられている。高齢個体の社会行動の頻度が低下する傾向は,ヒトのみならずマカク類や類人猿においてもみられる。本研究では,ワオキツネザル(Lemur catta)に高齢個体の社会活動性の低下が見られるかどうかを明らかにする。近年の研究で,マダガスカルに生息するキツネザル類は体サイズのわりに長生きをすること,かつ高齢個体でも高い繁殖能力を維持することが明らかになってきている。このように,真猿類と異なる生活史特性をもつキツネザル類の老化研究は,霊長類における身体的老化と社会活動性の関係についての新たな情報を提供することが期待される。本研究は,2016年9月から11月および2017年2月から3月にかけて,マダガスカル南部のベレンティ保護区でおこなわれた。この保護区では1989年から個体識別にもとづく継続調査がおこなわれており,調査地域で生まれた全個体の正確な年齢が分かっている。調査地域で最高齢(20歳)のメスを含むC2A2群を対象に食性,活動割合,および社会行動(グルーミング,社会的遊び,敵対的交渉,近接)を記録し,その頻度をメス間で比較した。調査の結果,食性,活動割合,そして社会行動の頻度はいずれもオトナメス間で有意には異なっていなかった。このことから,ワオキツネザルの高齢メスは必ずしも社会活動性を低下させないことが明らかになった。キツネザル類における社会的孤立は,老化よりも健康状態の悪化や社会関係の変化といった別の要因によって生じるようだ。

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© 2018 日本霊長類学会
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