霊長類研究 Supplement
第34回日本霊長類学会大会
セッションID: P37
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ポスター発表
メチル化解析によるチンパンジーの年齢推定
*井上-村山 美穂伊藤 英之鵜殿 俊史平田 聡
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抄録

霊長類のように寿命の長い種においては,長期の観察記録が得られない場合,対象個体の年齢や集団の年齢構成を推定することができれば,生態の解明に大きく貢献することが期待できる。本研究では,チンパンジーを主な対象として,DNAのメチル化の検出による年齢推定の可能性を検討した。熊本サンクチュアリにおいて飼育され,年齢の判明しているチンパンジー20試料(採取時の年齢2-39才)について,メチル化と年齢の関連を解析した。血液からDNAを抽出し,バイサルフェイト処理した後,ヒトで年齢とメチル化の関連が報告されている遺伝子ELOVL2, CCDC102B, ZNF423の配列にもとづいて設計したメチル化対応プライマーでPCR増幅し,パイロシーケンス法で塩基配列を解析した。配列中のシトシンがメチル化されていれば,バイサルフェイト処理後の配列ではチミンとなる。変化した配列の割合を調べたところ,ELOVL2は年齢と正の有意な相関があった。CCDC102BとZNF423は有意ではないが,年齢と共に減少する傾向がみられた。これらの傾向は,ヒトの既報とも一致していた。8個体の20年間の比較では,メチル化割合の増減に個体差が見られた。相関が低かったZNF423を除いて,ELOVL2とCCDC102Bの2遺伝子の5か所と年齢の相関係数は0.74(p = 0.0318),誤差は5.4年であった。これらの遺伝子を指標として,ある程度の年齢推定が可能と考えられる。今後は,より簡便な解析方法を工夫し,試料数を増やして検証するとともに,霊長類の他種や,フンなど非侵襲的な試料での応用可能性についても検討する。

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© 2018 日本霊長類学会
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