主催: 日本霊長類学会
会議名: 日本霊長類学会大会
回次: 34
開催地: 東京都
開催日: 2018/07/13 - 2018/07/15
【目的】宇部市ときわ動物園で飼養するハヌマンラングール(Semnopithecus entellus)の2頭の幼齢個体(タラ:4歳,サト:3歳)は,母親の育児放棄により人工哺育で育ち,それぞれ生後約12ヶ月で母親を含む2頭の成熟個体(ソフィー:25歳,リンダ:20歳)との同居を開始した。昨年の調査において,2頭の幼齢個体と2頭の成熟個体との間には,ほとんど接触が見られず,個体間距離が3 m未満であった割合が40%未満であった。本研究では,3歳となったサトと2頭の成熟個体との個体間距離を観察し,幼齢個体の成長に伴う成熟個体との個体間距離の変化を調査した。【方法】調査は2018年4月から5月に8回実施し,ときわ動物園で飼養するハヌマンラングール2頭の成熟個体とリンダの子であるサトについて観察を行った。サトは2016年7月に成熟個体との同居を開始している。記録は,2頭の成熟個体とサトの個体間距離を4段階に区分し(「接触:0 m」「近接Ⅰ:1 m以内」「近接Ⅱ:1~3 m」「近接Ⅲ:3 m以上」),両者の個体間距離が変化する毎に時間・距離区分を記録した。行動観察は,屋外展示施設で給餌後の約30分間,直接およびビデオ撮影にて実施した。サトと2頭の成熟個体の各組み合わせ間における距離の観察時間に占める割合はMan-Whitney検定を用いて統計解析を行った。【結果】サトとそれぞれの成熟個体との個体間距離では,近接Ⅰの割合が,対リンダ10.1±7.0%で対ソフィー(1.3±1.6%)よりも有意に割合が高く,近接Ⅲの割合については,対リンダ(55.3±26.3%)が対ソフィー(85.6±15.6%)よりも有意に低い割合となった。サトの2歳時の対リンダの近接Ⅰの割合は3.9±7.4%であったが,3歳時には10.1±7.0%と有意に高い割合となった。また,姉であるタラの同年齢での対リンダの近接Ⅰの割合は6.8±14.7%であり,サトと比較し有意に低い値であった。以上のことから,サトと母親個体との個体間距離は,サトの成長に伴い近くなる結果となった。