主催: 日本霊長類学会
会議名: 日本霊長類学会大会
回次: 35
開催地: 熊本
開催日: 2019/07/12 - 2019/07/14
テングザルは,名前の由来になっている天狗のように長く大きな鼻が特徴的なサルである。テングザルがなぜこのような奇妙な形態進化をとげたのかは大きな謎であった。先の私たちの研究から,テングザルの雄の鼻の大きさはその声の低さと関係し,また鼻の大きさが雄の肉体的な強さと(体格の大きさ),高い繁殖能力を保証する(大きな睾丸),雌を魅了するための大きな武器となっていることが明らかとなっている。同時に,大きな鼻という雄の強さを示す「勲章」のおかげで,雄同士は互いの強さを推し量り,雌をめぐる無駄な争いを避けていることが示唆された。一方,霊長類にとって犬歯は,雄の強さを示す重要な武器だと考えられている。事実,雌雄の犬歯サイズの差は,霊長類の種内の性をめぐる競合の強さや捕食圧と相関することがわかっている。本発表では,鼻の大きさが性をめぐる競争の重要な武器となっているテングザルにおいて,犬歯がどのような役割を果たしているのかを報告する。テングザルの特殊な形態,社会,音声は,性選択と自然選択によって説明されることを議論したい。