霊長類研究 Supplement
第35回日本霊長類学会大会
セッションID: B20
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口頭発表
飼育下チンパンジーにおける腸内細菌叢の多様性
*早川 卓志平田 聡
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抄録

腸内細菌は食物の消化・代謝を助けるだけでなく、ホストの高次の生理や疾患とも関連している。飼育下動物の腸内細菌叢の構造を把握することは、その動物の基礎的理解だけでなく、健康や福祉の向上において重要である。本研究では、熊本サンクチュアリで飼育されている49個体の成体チンパンジーにおいて、2015年10月から翌年5月にかけて糞便を収集し、16S rRNAの部分塩基配列シークエンシング(V1-V2領域)によって腸内細菌叢を分析した。対象個体は出生年が1970年から99年までで、両性や来歴(野生生まれか飼育生まれかなど)が混在している。大半が西亜種であるが、交雑種や別の亜種も含まれている。そのほか、健康状態、飼育環境、個性、ゲノム配列なども詳細に記録されており、これらの要因が腸内細菌叢と相関するかを検討した。腸内細菌叢は個体内でも時間的に変動するため、22個体においては異なる日に複数回、糞便を収集し、最終的に84サンプルを分析した。一次解析の結果、全サンプルで3021種類の細菌由来の操作的分類単位(OTU:菌の種数を便宜上反映する数値)が検出され、各サンプルは最小114、最大924(中央値681個)のOTUを有していた。これは先行研究で知られる一般的な飼育霊長類が持つOTU数と大差ない。各OTUの豊富度を指標に、サンプル間の類似度をPERMANOVAで検定したところ、同一個体由来サンプルは有意に類似(P<0.05)しており、個体内における菌叢の頑健性を確認した。また性差も確認され(P<0.01)、OTU数は全体的にオスよりもメスの方が高かった。しかし、熊本サンクチュアリの多くのオスは、メスと飼育場所が違うため、これが生物学的な性差に由来するものなのか、飼育環境の違いに由来するももなのか、検証が必要である。今後、塩基配列から同定された菌分類などももちいて、各個体のプロフィールに即して分析し、飼育チンパンジーの腸内環境の基礎的理解や、健康や福祉への貢献の手がかりに繋げたい。

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© 2019 日本霊長類学会
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