主催: 日本霊長類学会
会議名: 日本霊長類学会大会
回次: 35
開催地: 熊本
開催日: 2019/07/12 - 2019/07/14
多くの小型霊長類が果実や昆虫を主要食物とする中,ジェントルキツネザルは竹食スペシャリストという極めて異例な進化を遂げた。年間を通じて利用可能な竹は安定した食物資源であり,竹食に特化することで他種との採食競合を回避できるというメリットがある。一方で,竹には難消化性繊維が多く含まれ,種によっては極めて高い毒性が報告されている。本発表では,マダガスカル共和国・ラヌマファナ国立公園において同所的に生息するジェントルキツネザル3種を対象に,有毒な竹Cathariostachys madagascariensisへの依存度と腸内細菌叢の構成パターンについて報告する。依存度が最も高かったのはヒロバナジェントルキツネザルで採食全体の98%を占めており,次いでキンイロジェントルキツネザル (73%),ハイイロジェントルキツネザル (22%) であった。採食部位については種差があり,ヒロバナジェントルキツネザルは地上性タケノコと成熟葉,キンイロジェントルキツネザルは側枝状タケノコと新葉,ハイイロジェントルキツネザルは新葉を主要食物としていた。比色キットを用いて青酸配糖体濃度を測定したところタケノコにおける含有量が高く,とりわけ地上性タケノコでは検出上限値の800ppmを示した。一方で,新葉からはほとんど検出されなかったことから,青酸配糖体の摂取量には種差があり,ヒロバナジェントルキツネザルにおいて最も高くなると推測される。採取した糞を用いたメタゲノム解析の結果,ヒロバナジェントルキツネザルの腸内細菌パターンは他の2種とは大きく異なっていた。植食性スペシャリストは植物毒への耐性を獲得するよう進化しやすいことから,解毒作用をもつ腸内細菌種を保有している可能性などについて考察する。