主催: 日本霊長類学会
会議名: 日本霊長類学会大会
回次: 35
開催地: 熊本
開催日: 2019/07/12 - 2019/07/14
サル類における腸管寄生アメーバの感染実態を明らかにすることは,人獣共通感染症対策の見地からも重要である。我々はこれまでに,様々なマカクから赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)とは異なる病原アメーバE. nuttalliを分離している。今回は,タイ中央部の6県7か所において採取した野生カニクイザルの糞便214検体について,E. nuttalliの探索と分離株のDNA多型解析を行った。まず,糞便から抽出したDNAについて,PCR法による各種Entamoeba属虫体の検出を試みた。E. chattoni(E. polecki ST2)陽性が175検体(82%),大腸アメーバ(E. coli)陽性が115検体(54%),E. nuttalli陽性が94検体(44%)であった。一方,赤痢アメーバとE. disparは検出されなかった。また,糞便を培養し,E. nuttalliの24株を分離した。18S rRNA遺伝子には株間で差がなかったが,tRNA関連反復配列の6座位を解析したところ,24株は14のDNA型に分けられた。系統樹解析の結果は地理的分布の違いをよく反映しており,株間の遺伝的距離と地理的距離には有意な相関が認められた。腸管寄生アメーバのDNA多型解析から,宿主の移動や拡散についても推定できると考えられる。