霊長類研究 Supplement
第35回日本霊長類学会大会
セッションID: P41
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ポスター発表
どんな“さる”だったのだろうか? —イヌノミのペスト媒介能力の実験—
*好廣 眞一西山 勝夫宗川 吉汪
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抄録

1945年5月31日、満州第七三一部隊の平澤正欣陸軍軍医少佐は、主論文「イヌノミのペスト媒介能力について」等を京都帝国大学に提出し、医学博士の学位を申請した。これを受けつけた大学は、医学部教授会の議を経て文部大臣に学位許可を申請、9月26日に認可を受け、同日に学位授与を決定し、学位記(学位記番号:医2556)を同人の代理人に届けた。この論文の「VII 特殊実験」で用いられた動物は“さる”と記されているが、実はヒトではなかったか? 同論文の中身を検討してみた。「第一 緒言」---新京市田島犬猫病院でペストの初患者が出、次いで同人の家族と近隣に続発した。これは、「同病院に入院した某富豪のイヌがペスト菌感染したノミを持ち込んだのではないか?」と疑い、実験で証明しようとした。イヌノミがヒトのペストを媒介することは知られていなかった。まず、動物実験で、イヌノミがペストを媒介できることを確認した上で、「特殊実験」を行い、イヌノミがヒトペスト媒介者だとの新事実を発見したので報告する、とある。① 新京のヒトペスト流行をイヌノミに依ると疑って実験し、② イヌノミがヒトにもペストを媒介すると証明した、と述べている。ヒトで実験したとの告白ではないか? 「第三 実験成績 VII 特殊実験」---保菌後3日目のイヌノミを、“さる”の大腿に、1匹、5匹、10匹付着させた。6〜8日後、5匹付着させた3頭中1頭、10匹付着の3頭中2頭が発症した。発症した“さる”は、頭痛、高熱、食欲不振を訴えた。発症 “さる”のうち、10匹付着の1頭は、39度以上を5日間持続し、発病6日目(付着後13日目)に死亡した、とあり、「死亡さる体温表」が載っている。この図は、ヒトのものではないか? 七三一部隊で使用可能だったかもしれないアカゲザルの生理的体温は38℃前後と高く、図の36℃後半は低すぎる。

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