主催: 日本霊長類学会
会議名: 日本霊長類学会大会
回次: 35
開催地: 熊本
開催日: 2019/07/12 - 2019/07/14
動脈硬化症を引き起こす高コレステロール(Ch)血症は厚労省において今なお難病に指定され、原因不明が4割もある。LDL受容体遺伝子(LDLR)にCys82(61)Tyr変異を持つインド由来アカゲザル7頭の血中LDL値はCh不含の常食下で有意に約50mg/dl高い。この7頭に0.1%または0.3% Ch含有食の投与実験を行った結果、2頭が12週でヒトの難病に匹敵する高いLDL値370mg/ dlを示した。これら2頭と同一家系内のLDLRヘテロ接合体1頭、計3頭の全ゲノム解析をイルミナHiSeq X5 seq systemにより行った。高Ch血症を引き起こす可能性のある遺伝子16候補についてエクソン、スプライシング部位、プロモーター領域について検討し、高Ch血症の2頭に共通する変異が5遺伝子のエクソンで6個のSNPとして新たに見出されたので、残るLDLRヘテロ接合体5個体(すでに死亡している元になった#1304を含む)と正常個体4頭について、これら6個のSNPを調べた。各SNPを含む約300塩基の塩基配列をABI Genetic Analyzerにより決定した。高Ch血症の2頭にあったLDLRのさらなる変異Ile598(577)Valはこの家系の他の個体もホモ接合体で有しており、LDL結合領域に近い変異であったが、難病レベルのLDL値を示す原因とはならなかった。その他LDLRAP1: Asn102 Ser, EPHX2: Thr51Ile, ITIH4: Ser12Gly, Glu432Asp変異がこの2頭にヘテロで共通にあったが家系内にもヘテロ、ホモ接合体がおり多型的であった。LDLR遺伝子の転写に必要なMBTPS2のVal241Ile変異は12頭中、高Ch血症の2頭のみにあったが、膜結合領域内の疎水性アミノ酸どうしの変異であり、その影響を調べるためLDL受容体活性測定を現在計画している。その他ヒトの高Ch血症を調べる際に主に検討されるPCSK9, APOB, APOE, LIPA, STAP1にはこの2頭のみに共通する変異はなかった。現在 NCBI, LOVDなどのデーターベースを参考に他の遺伝子についてさらに解析を進めている。(京大・霊長研 共同利用研究2018-B-53)