霊長類研究 Supplement
第35回日本霊長類学会大会
セッションID: HP01
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中高生ポスター発表
α個体の死によるニホンザルの「鳴き交わし」の変移 —披露山公園特有行動の発現について—
*高橋 伶佳
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抄録

神奈川県逗子市披露山公園だけで起こる「鳴き交わし」はク―コールの一種であるが,一日の中で給餌前のみ,しかも飼育員が見える前,最長約70分前から鳴き交わし続ける。他園では起こらず,披露山公園のみで起こる理由を解明することを試みた。また,調査期間中にα個体が死亡しα個体不在となった。α個体の有無が鳴き交わしに影響を及ぼすかも調べた。2017年から今日まで,掃除終了時から給餌開始までの時刻を記録し,その間にどの個体が何時,何回鳴き交わしたかを記録した。他園にはアンケート調査を実施した。また,鳴き交わしの音声分析も行った。結果から,披露山公園でしか鳴き交わしが起こらないのは,閉鎖環境の中でのエサ不足が原因であることが示唆された。α個体死亡の影響は,次の4点が見られた。①α個体生存時は一番最初に鳴く個体はα個体だったが,死亡後は定まらなかった。②生存時は,掃除終了時から鳴き交わし開始までの時間はほぼ一定だったが,死亡後はばらつきが見られた。③生存時は鳴き交わし回数は少なかったが,死亡後は100回を超える日が大幅に増えた。④死亡後は,鳴き交わし中の喧嘩回数,木ゆすり行動の回数が非常に増えた。①のα個体生存時については,野生ニホンザルのク―コールは最優位の雌の発声を通して家系をまとめており(丸橋珠樹,2000),披露山公園でも同事象が起こったと言える。α個体死亡後に第一声の個体が定まらなくなったのはα個体不在によると考えられる。②,③はα個体不在で群れが鳴き交わし中に興奮(④参照)しているのが原因と思われる。一方,鳴き交わしの声を分析すると,飼育員が見える前では周波数が低く時間も短く,見えた時では反対のことが見られた。これは野生ニホンザルで仲間が近くにいる場合といない場合にそれぞれ合致しており,披露山公園ニホンザルは仲間に鳴き交わす時と飼育員に給餌の依頼をしている時で,音声を使い分けていることが証明された。

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© 2019 日本霊長類学会
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