主催: 日本霊長類学会
会議名: 日本霊長類学会大会
回次: 36
開催地: オンライン開催
開催日: 2020/12/04 - 2020/12/06
食物量の変化は霊長類の行動生態に大きく影響する。 特に果実は重要な食物資源であり、少果実期に生き延びる採食戦略が、野生霊長類の食性の多様化を導いたとされる。では、エネルギー価が高く存在量が安定した「理想の果実」が人為的に与えられた場合、種ごとの食性はどう変化するのか。本研究では、異なる食性を持つキンガオサキとコモンリスザルが、毎日一定量与えられる給餌のフルーツと、季節変動のある森林内の食物資源をどのように利用するかを比較した。2019年3月から2020年2月の1年間、ブラジル・国立アマゾン研究所(INPA)の構内において、毎日給餌がおこなわれているFree rangingのリスザル1群とサキ2群を追跡し、瞬間スキャンサンプリング法を用いて行動と採食品目を記録した。また1000本の調査木について、花、果実、新葉の有無を毎月一回記録した。リスザルでは、少果実期に給餌の利用割合が森林内果実よりも高くなることがあったが、サキでは、少果実期であっても、給餌の利用割合が森林内果実の利用(主に種子の利用)を上回ることはなく、多果実期には給餌を利用しない日もあった。こうした差が見られた一方で、サキとリスザルの両種は共通して、多果実期には給餌の採食時間割合を減少させ、森林内果実の利用割合を増加させた。採食部位別に見ると、リスザルでは果肉の、サキでは種子の採食時間割合が増加していた。これらの結果は、サルたちにとって選好する食物は森林内果実であり、給餌は少果実期における代替食物であることを示唆する。霊長類は単に摂取エネルギーを最大化するのではなく、多様な食物の組み合わせで栄養バランスを保つという仮説があるが、完全な野生下でこれを実証することは難しい。本研究は存在量の制約がない給餌を選択可能な状況においても、霊長類が種ごとに異なる食物を選好することをフィールド実験として示した。