主催: 日本霊長類学会
会議名: 日本霊長類学会大会
回次: 36
開催地: オンライン開催
開催日: 2020/12/04 - 2020/12/06
カニバリズムは様々な動物で知られているが、霊長類では比較的まれである。そのため、カニバリズムが生じた文脈を詳細に記録した事例研究の蓄積は、その状況を理解し、潜在的な適応的意義を評価する上で重要である。本発表では、2019年4月9日にコスタリカ共和国のグアナカステ自然保護区サンタロサ地区に生息する野生ノドジロオマキザルCebus imitatorで観察されたカニバリズムの詳細を報告する。カニバリズムの対象となったのは、LV群の生後10日と推定されるメスのアカンボウであった。このアカンボウは、同じ群れ内のオスによる子殺しと思われる攻撃交渉の直後に木から転落した。その後、衰弱したため母親が運搬しなくなり、地上に横たわっていた。アカンボウが死亡した15分後に同じ群れの2歳のオス(アカンボウのはとこ)が死体の左足の指を食べ始めた。最終的にはアルファメス(アカンボウの祖母)が死体を独占し、 31分間にわたって食べたが、死体の上半身のほとんどを食べ残した。カニバリズムが生じている間、群れメンバーのほとんどが死体の匂いを嗅いだり、触ったり、威嚇するなどの興味を示したが、他のメンバーは死体を食べようとしなかった。本事例が観察された当時、2歳のオスは離乳した直後だったこと、アルファメスは妊娠後期だったことを考慮すると、栄養摂取への強い欲求がカニバリズムを引き起こした一因となった可能性が考えられる。本調査地では、子殺しが比較的頻繁に観察されるが、今回の事例が37年以上の研究で記録された唯一のカニバリズムの観察であることを考えると、カニバリズムはこの種では珍しい行動であると考えられる。