霊長類研究 Supplement
第36回日本霊長類学会大会
セッションID: C12
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口頭発表
ミャンマー中部で発見された後期中新世の大型ホミノイド上腕骨化石
高井 正成中務 真人Thaung-Htike江木 直子Zin-Maung-Maung-Thein河野 礼子楠橋 直
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抄録

ミャンマー中部に分布する後期中新世初頭の地層から発見された大型ホミノイドの上腕骨化石について予備的に報告する。対象とする化石(NMMP-IR-5555)はマグウェーの南約50kmにあるテビンガン地域で、 2018年に村人が農作業中に発見した。現地の地質調査の結果、化石が出土した層準はミャンマー中部に広範囲にわたって分布するイラワジ層最下部にあたる。共産する哺乳類化石相を南アジアの中部シワリク層からみつかる哺乳類化石相と詳しく比較した結果、産出層の年代は約900〜850万年前と推定された。IR-5555は非常に大型なホミノイドの右上腕骨遠位端(肘)の化石で、多少の磨耗痕はあるが、関節部などの保存状態は良好で詳しい解析が可能である。サイズはオスのゴリラ程度で、滑車部が幅広く上腕小頭は球形に近い。 前面の鈎突窩が深いのに対し後面の肘頭窩はやや浅く、その外側縁稜が比較的低い。上腕骨後面外側部が非常に広い。内側上髁はやや後屈し、比較的短い。現生大型類人猿の共有派生形質とされる滑車上縁稜の切痕と小頭遠位部の外側後面の斜行稜線に関しては、前者は確認できるが後者は存在しない。また現生オランウータンに見られるような滑車凹部の極端なくびれや発達した外側髁上稜は見られない。全体的にテビンガンの肘化石は比較的原始的な大型類人猿の特徴を示しており、その巨大なサイズから判断して地上性の四足歩行者であった可能性が高い。しかし、ゴリラで見られるようなナックルウォーキングに適応した特徴は観察されない。一方で、暫定的な観察結果ではあるが、シバピテクスやオランウータンとの近縁性を示す共有派生形質も確認できていない。

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