霊長類研究 Supplement
第36回日本霊長類学会大会
セッションID: P01
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ポスター発表
DeepLabCutを用いたニホンザルのマーカーレス運動計測の試み
木下 勇貴平﨑 鋭矢
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抄録

ビデオ撮影は動物の行動や運動を観察・計測する上で最も広く一般的に使われている方法である。しかし, 得られた映像から行動の特定の側面を抽出するには, 人間の手と目による解析が必要で, その作業には労力がいる。また, 運動研究では, 関節点の追跡のためヒトや他の動物に身体表面マーカーを貼付するが, そうした侵襲的な操作は自然な動きを阻害する可能性がある。 こうした障害をクリアするために, マーカーレス姿勢推定のためのソフトウェアDeepLabCut (以下, DLC) (Mathis et al., 2018) が様々な分野で導入されつつある。DLCは, 深層学習を用いて動物の関節などの特徴点を動画から抽出することで, 高い精度で動物の姿勢を推定する。本研究では, 霊長類の野外や室内での研究にDLC が利用可能かどうか判断するために, 手動でデジタイズした場合とDLCを用いた場合との精度について比較検証した。身体表面マーカーを貼付していないニホンザルの実験室内での歩行をビデオ撮影した。 動画から複数のフレームを抽出し, 実験者が関節位置をデジタイズした。得られた座標セットを訓練データと検証データに分け, 訓練データを用いてDLCのネットワークを学習させた。その後, 学習済みネットワークによって検証データの関節位置を推定した。DLCが推定した検証データの関節座標の位置と, 実験者が設定した関節座標の位置との誤差(pixel) を計算し, DLC誤差E(d) を得た。また, 実験者が検証データに対して再度ランドマークを設定し, 実験者誤差E(e) を取得した。E(d) とE(e) を比較することで, DLCの精度について検証した。身体表面マーカーの自動追跡にも利用できるかどうか検証するため, 以上の解析をマーカーありの条件でも実施した。得られた結果を元にDLC の利用可能性について考察を加える。

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© 2020 日本霊長類学会
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