霊長類研究 Supplement
第36回日本霊長類学会大会
セッションID: P02
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ポスター発表
野生ニシローランドゴリラにおける推定の致死的種内攻撃によるブラックバックオスの死亡事例
田村 大也Wilfried Ebang Ella GhislainAkomo-Okoue Etienne François
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抄録

同種他個体に対する致死的攻撃は多くの霊長類種で見られる現象である。ゴリラ属では子殺しに加え、エンカウンター時の身体的闘争の結果、成熟オスのシルバーバックが死亡することがある。一方、成熟前の若いオスである「ブラックバック」が同種内における敵対的交渉の結果、死亡に至るケースは知られていない。本発表では、野生ニシローランドゴリラの1頭のブッラクバックオスが重傷を負い、その後死体で発見された事例を報告する。本事例はガボン共和国ムカラバ-ドゥドゥ国立公園の人づけされた野生ニシローランドゴリラの群れ(ニダイ群)で観察された。死亡した個体は、観察当時推定14歳のブラックバック「ドド」である。 ドドは3歳時に右腕の肘から下が切断されたため、片腕の状態で成長した個体である。2019年12月8日、身体の前面に怪我を負っているドドを群れ内で確認した。目視で確認された怪我は、右胸上側部の大きな裂傷、左胸中央部の小さな裂傷、腹部上部の犬歯傷であった。腹部の犬歯傷からは流血が見られ、呼吸が乱れている様子もあった。この日は追跡終了時までドドは群れと共に遊動していた。12月9日は群れを発見できず、 12月10日から14日までニダイ群を終日追跡したがドドは確認できなかった。12月15日、森の中でドドの死体を発見した。野生ニシローランドゴリラがこのような重傷を負う原因として考えられるのは、同種他個体による攻撃とヒョウによる捕食である。本事例では、ドドが怪我を負う瞬間を直接観察していないため推測の域を出ない点は注意が必要だが、怪我の様子などから総合的に判断すると、同種他個体による攻撃が原因である可能性が高いと考えられる。ニシローランドゴリラでは子殺しを含め同種内の致死的攻撃の直接観察例はないが、本事例は致死的な攻撃行動が本種でも起こり、またブラックバックにも向けられることを示唆する貴重な観察である。

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