霊長類研究 Supplement
第36回日本霊長類学会大会
セッションID: P03
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ポスター発表
マハレ山塊国立公園のカンムリクマタカによる霊長類捕食
清家 多慧
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抄録

アフリカに生息するカンムリクマタカはヒョウなどの大型食肉目と並んでアフリカの特に森林性の霊長類にとっては主な捕食者であると考えられている。しかし、カンムリクマタカの研究は疎開林や都市近郊でのものが多く、森林での生態についてのデータは少ない。本研究では森林に生息するカンムリクマタカの獲物内容を明らかにするため、タンザニアのマハレ山塊国立公園においてカンムリクマタカの巣1つにビデオを設置して巣への獲物の持ち帰りを撮影し、動画から獲物種の同定を行った。撮影は2019年10月9日から2020年3月18日の日中に行った。この期間に巣を訪れたのはオスとメス1 羽ずつで、ヒナも確認された。正確な孵化の日付がはっきりしなかったため、ヒナの羽毛の生え変わり時期から孵化日を11月3日と推定し、それ以降の育雛期における動画データ(計103日、803時間)を分析に使用した。なお、撮影最終日までヒナは巣で親の持ち帰った獲物を食べていた。育雛期間中、獲物の持ち帰りは計46回撮影され、ヒナによる獲物の持ち帰りはなかった。獲物は霊長類が26回と最も多く、うち16回はアカオザルと同定できた。マハレではアカオザルを中心に霊長類の生息密度が他の哺乳類種よりも高いため、この結果は獲物種の生息密度を反映している可能性が高い。一方、同所的に生息するチンパンジーとヒョウも霊長類を捕食するが、アカオザルではなくアカコロブスを捕食することが多いことが先行研究から分かっている。この違いは同じ森林で肉資源をめぐる捕食者間でのニッチ分化の結果なのかもしれない。さらにこのような捕食者の選好性の違いは被食者である霊長類の対捕食者戦略の違いにもつながると考えられる。また、カンムリクマタカのオスは霊長類の持ち帰りが多かったのに対してメスはブルーダイカーが多く、2 羽の間で違いが見られた。

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© 2020 日本霊長類学会
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