霊長類研究 Supplement
第36回日本霊長類学会大会
セッションID: P15
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ポスター発表
血縁度推定から見るベニガオザルのオス間連合形成の相手選択
豊田 有丸橋 珠樹川本 芳松平 一成Malaivijitnond Suchinda
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抄録

発表者らがタイ王国で研究を続けている野生ベニガオザルの地域集団では、オス複数頭が協力して群れ内のメスを他のオスから防衛し、囲い込んだメスと交互に交尾をする「連合」形成のような繁殖戦略がみられる。 これは、繁殖資源という極めて競争性の高い資源を共同で防衛し、得た利益( 交尾機会) を分配するという協力行動の一形態である。一般に協力行動進化の議論では血縁選択が重要な焦点となるが、母系社会をもつマカク属において、オス間には血縁関係を想定できないことから、ベニガオザルのオス間で観察される繁殖をめぐる連合形成は、非血縁個体間での協力行動と考えられる。本発表では、タイ王国の野生集団で観察されたオス間連合形成について、マイクロサテライトDNAのフラグメント解析の結果から算出される血縁度を用い、協力相手選択に与える血縁度の影響を考察することを目的に分析を実施した結果を報告する。2015年9月から2017年6月までの18カ月間に実施した調査中に記録された433例の交尾のうち、オス間の連合形成によって交尾がおこなわれた連続多数回交尾26 例を抽出し、この連合形成に参与したオスたちの血縁度を、集団に属するオス間血縁度と比較した。血縁度の推定はマイクロサテライトDNA12座位の分析結果をもとにGenAlEx 6.3を用いて理論値を算出した。結果、調査地に生息する5群のなかで、連合形成が確認された3つの群れ(Ting, Nadam, Fourth)のうち、Ting群で見られた連合形成オス間の血縁度は、集団内のオスの血縁度の平均より有意に高かった一方、他の2つの群れの連合形成オス間にはこの傾向は見られなかった。本発表では、連合形成が見られなかった群れのアルファオスと他オスとの血縁度の関係や、地理的に隔離されている集団におけるオス間の血縁度の解釈の限界を含め、連合形成相手の選択に遺伝的要因が与える影響についての詳細を報告する。

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© 2020 日本霊長類学会
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