霊長類研究 Supplement
第36回日本霊長類学会大会
セッションID: P26
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ポスター発表
ワンバの野生ボノボにおける、メスが他集団のコドモを「養子」とした2事例
徳山 奈帆子戸田 和弥Poiret MarieBahanande Iyokango石塚 真太郎
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抄録

母親を亡くした子どもへの養育行動は、稀ではあるが霊長類に広くみられる行動である。特にそのような養育行動が特定の一個体により行われる場合、「養子取り行動」と呼ばれる。養子取り行動は養母(オスの場合もある)と養子の血縁関係、未経産メスにより行われる場合は子育ての練習、または生母と養母の間の社会関係で説明されることが多い。本発表では、コンゴ民主共和国ルオー学術保護区(ワンバ)において観察された、2事例の養子取り行動について報告する。 事例1(2019.4~) では、自分のコドモ2頭(2.1歳メス、 4.8歳メス) を持つ母親であるMarie(PE集団) が、出身集団不明のFlora(推定2.6歳メス)を養子とした。 Marieは運搬、授乳、毛づくろいや食物配分など母親からコドモに対して行う養育行動をFloraに対して行った。事例2(2019.10~) では、閉経後と考えられる老メスChio(PW集団)が、出自集団不明のRuby(推定3.0歳メス) を養子とした。乳の分泌は行われていないと考えられるものの乳首接触がみられたほか、運搬や毛づくろいなどの養育行動が観察された。両事例とも、集団の他個体から養子への攻撃的な行動は見られなかった。mtDNAの分析により、両事例とも養母と養子の間に母系の血縁関係はないことが分かった。 また両事例とも生母の生死は不明である。 このような養母が自らと異なる集団のコドモを養子とする事例は、大型類人猿では初めての観察である。両事例とも、養子取りは血縁関係や子育ての練習が要因となって起こったとは考えにくい。集団間の出会いによる生母との社会関係が存在した可能性はある。他集団個体に対する高い寛容性や母性本能、利他的な行動傾向などボノボの持つ様々な特徴が、他集団のコドモを養子とすることを可能にしたのかもしれない。

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