霊長類研究 Supplement
第36回日本霊長類学会大会
セッションID: P29
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ポスター発表
身体障害を伴うチンパンジーを含む群れメンバーの行動:縦断的・横断的比較
櫻庭 陽子近藤 裕治長野 太輔福原 真治足立 幾磨林 美里
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抄録

事故や病気,高齢等によって身体に大きな障害を伴う飼育下動物において,飼育・ケアの環境は重要である。 社会的な環境で暮らすチンパンジーの場合,身体障害個体を群れに戻す選択肢を考える必要があるが,身体的ハンデと社会的ハンデとの関連について議論する必要がある。そこで身体障害が障害個体自身及び群れのメンバーの行動にどのような影響を与えるか,名古屋市東山動植物園(東山)と熊本動植物園(熊本)のチンパンジー群を対象に縦断的・横断的視点で比較を試みた。縦断的な比較として,左前腕欠損のオトナメスAKと右半身まひのオトナメスYR,及びその群れの健常なオトナ4個体の東山の全6個体を対象とし,AK・YRの健常時及び障害時における行動のデータを比較した。横断的な比較として,右後肢欠損のオトナメスYK及びその群れの健常なオトナ4個体の熊本の全5個体と,調査前に死亡したYRを除く東山の全5個体の行動を比較した。行動観察は,いずれもスキャンサンプリング法により,採食,移動,非活動,社会行動,その他,他個体へのグルーミング及び他個体からのグルーミングのデータを収集し,各行動について,身体障害の有無に加え,個体の年齢,性別,観察日の平均気温,縦断的分析では観察時期(3水準),横断的分析では群れ(2水準) を独立変数,個体差を変量効果として一般化線形混合モデルのAIC比較により分析を行った。結果,縦断的な分析では,他個体へのグルーミングにおいて身体障害個体が減少している傾向が見られるほか,非活動,社会行動,その他の行動に身体障害の有無が影響している傾向が見られた。一方横断的な分析では身体障害が要因となる行動の違いは見られなかった。これらのことから,身体障害による障害個体の行動への影響は見られたが,他個体からの社会行動には変化がなく,また横断的分析では大きな違いがないことから,身体的ハンデが社会的ハンデに繋がらない可能性が示唆された。

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© 2020 日本霊長類学会
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