霊長類研究 Supplement
第36回日本霊長類学会大会
セッションID: P30
会議情報

ポスター発表
ヤクシマザルにおける空間配置に関連したオスの交尾戦略
大谷 洋介澤田 晶子半谷 吾郎
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

複雄複雌集団において、高順位のオスは集団の空間的な中心を独占することで繁殖戦略上の有利を享受するが、必ずしも交尾、繁殖を独占しているわけではない。低順位オスはいくつかの代替戦略によって交尾を成功させており、結果として社会的地位と繁殖成功に明確な相関が見られない例が先行研究により示されている。オスによる各交尾戦略の有効性とコストを明らかにするためには、オスと集団の空間配置を明らかにし、様々な状況下でオスがどのように各戦略を組み合わせているのかを示す必要がある。本研究ではヤクシマザル(Macaca fuscata yakui) を対象に雌雄同時追跡を実施し、集団に所属するオスが3種の交尾戦略(mate guarding, sneak mating, cross-boundary mating)をとる条件を空間配置とともに明らかにした。高順位のオスは通常mate guarding戦略をとるが、自集団内の発情メスが極端に少ない場合には他集団のメスと交尾を試みるcross-boundary mating戦略をとっていた。 低順位オスは主にsneak mating戦略をとっていた。 この戦略は他個体から隠れて交尾を行うものであるが、今回の調査地においては集団から遠く離れることはなく、この戦略をとるための移動コストは高くないことが示された。加えて、低順位オスもcross-boundary mating戦略をとっていた。この戦略には、潜在的な交尾相手数を増加させることができるという他2つの戦略にはない利点が存在する。一方で他集団へ訪問し自集団へ帰還する移動コストは低くなく、また交尾に成功する確率は低かった。このためcross-boundary mating戦略は、自集団内での交尾成功の期待度が著しく低い場合に採用される補完的なものであることが示唆された。

著者関連情報
© 2020 日本霊長類学会
前の記事 次の記事
feedback
Top