霊長類研究 Supplement
第36回日本霊長類学会大会
セッションID: P33
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ポスター発表
飼育下アジルテナガザル1雌のグレートコールの個体内変異
打越 万喜子石田 崇斗山田 将也
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抄録

アジルテナガザル(Hylobates agilis) は歌とよばれる複雑な長い音声コミュニケーションをする。雌雄で異なるレパートリーを持ち、互いに調整してデュエットする。大人雌はグレートコールと称される特徴的なレパートリーを発し、ペアになっている大人雄はグレートコールの最後にメイルコーダをつける。本研究では、大人雌のグレートコールの構造は、単独やペアといった社会的環境で変化するのかを検討した。対象は日本モンキーセンターのアジルテナガザル雌1個体で、20年間以上と長きにわたって単独で飼育されていた。過去に一般家庭でペットとして飼われていた。この個体は通常のものに加えて、要素が繰り返される非常に長いグレートコールを持っていた。2017年9月に当該個体への社会的環境エンリッチメントを目的として、避妊をしたうえで、シロテテナガザル(Hylobates lar) の大人雄とペアにした。直後よりデュエットが確認された。 ペアリング前後の各1か月分の音声を連続記録した。 ペアリング前の計359のグレートコールとペアリング後の計261について、持続時間やノート数、周波数ピークの位置、等の項目を分析した。結果、オスと一緒にした後にも当該個体の非常に長いグレートコールは無くならなかったが、その数が減った。そもそもどうして非常に長いグレートコールをどのように獲得したのか謎は残るが、1個体の大人雌のグレートコールの構造が、社会環境の推移に応じて個体内で変化しうる可能性を示唆している。

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© 2020 日本霊長類学会
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