主催: 日本霊長類学会
会議名: 日本霊長類学会大会
回次: 36
開催地: オンライン開催
開催日: 2020/12/04 - 2020/12/06
物の操作は、ヒトを含む霊長類の認知発達をはかる比較尺度となる。物の操作には、単純な把握から、道具使用などの複雑な操作まで、さまざまなレベルがある。 道具使用の前提となる定位操作は、物と物を組み合わせる操作パターンだ。この定位操作の発達について、ヒト乳幼児とチンパンジーでは縦断的に、ボノボ・ゴリラ・オランウータンでは横断的に観察をおこなった。 ヒト乳幼児では、箱の穴に棒を入れる、積木をつむ、入れ子状にカップを組み合わせる、という3種類の定位操作が、すべて1歳前半に初出した。チンパンジーでは、箱の穴に棒を入れるという定位操作は1歳前に初出したが、3個のカップを入れ子状に組み合わせる定位操作は1歳半、積木をつむという定位操作は2歳半以降にならないと出現しなかった。ボノボでは、チンパンジーと同様にカップを入れ子状に組み合わせる定位操作のほうが、早くから観察された。ゴリラでは、積木をつむという定位操作のほうが早くから観察された。オランウータンでは、入れ子のカップの組み合わせと、積木をつむという定位操作が、同じ年齢で見られた。入れ子のカップ課題でさらに詳細な種間比較をおこなった。入れ子状に組み合わせられるカップの個数や、その際に使われる方略のパターンが、発達的に変化することがわかった。さらに、ヒトとチンパンジーに共通する試行錯誤的な組み合わせの段階から、3歳半以降のヒト幼児を特徴づける、カップのまとまり同士を組み合わせる部品集積型による効率的なカップの組み合わせ方略があらわれることがわかった。飼育下の大型類人猿4種は、発達の時期や順序は異なるものの、道具使用の前提となる定位操作をおこなうことが明らかになった。チンパンジーは箱の穴に棒を入れる定位操作が大型類人猿の中でもっとも早くから見られたことから、野生でチンパンジーが多様な道具使用をおこなう認知的基盤である可能性が示唆されたといえる。