主催: 日本霊長類学会
会議名: 日本霊長類学会大会
回次: 36
開催地: オンライン開催
開催日: 2020/12/04 - 2020/12/06
動物園で動物を来園者に見せるにあたって、植物を配置し、まるで野生にいるかのように展示する手法が好まれる傾向にある。しかし、野生の生息地よりはるかに狭い飼育環境において、動物の利用を制限することなく植物を成育させるのは、困難な場合が多い。特に半樹上性のチンパンジーにおいては、木に登ろうとするほか、植物をディスプレーや遊び、採食などに利用するため、飼育環境での樹木の成育や繁茂は難しいとされてきた。1995年に京都大学霊長類研究所は、動物福祉の視点を取り入れた新しいチンパンジー屋外放飼場を作った(695㎡)。そこには日本の園芸品種を中心とした多様な植物を植え、その後10年に渡り年0∼ 2回の割合で追加して植樹を実施した。その結果、樹木は成長して高さ10mになり、森林のような空間を創り出すことに成功した。日本モンキーセンターにおいても、1997年より植樹をはじめ、その後数年、植樹を続けることで、現在では森のような空間ができている。日立市かみね動物園や京都市動物園でも、チンパンジー放飼場に工夫を重ねた上で植樹を実施し、森林のような空間を創り出すことに成功した。一方で、何年かに渡り植樹を複数回おこなっても、樹木が根付かない飼育環境もある。また、放飼場のデザインにより、植樹自体が困難な環境もある。日本では48施設で303個体のチンパンジーが飼育されているが(2020年10月現在)、これらすべてのチンパンジー放飼場について、植物の生育に焦点を当てて紹介し、環境エンリッチメントとしての今後の動向について考察する。