霊長類研究 Supplement
第36回日本霊長類学会大会
セッションID: H04
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中高生発表
なぜ「リスザルの島」のボリビアリスザルは高所によくいるのか~サルの位置と温度、日光との関係~
片山 和香佐藤 美奈子清水 実有杉浦 朱李滝 千鶴豊田 紗帆
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抄録

公益財団法人日本モンキーセンターの「リスザルの島」は広さ1500m2,シイ・カシ類などの常緑高木の森でボリビアリスザルが放飼されている。私たちは2019年に老齢個体のくらしについて明らかにするため、高さ,上下動,他個体との関係を研究した。高さを地面・地面からロープ(高さ約2m)・ロープ以上の3つに区分し記録したところ,どの世代でもロープ以上にいる割合が最も大きかった(老齢42.5%・子世代34.4%・孫世代52.8%)。また、上下動について上記分類の異なる高さへの移動を変化の度に記録した。移動頻度は老齢0.17回/ 分,子世代0.61回/ 分,孫世代0.71回/ 分,ひ孫世代1.05回/ 分で,老齢個体は上下動が少なかった。老齢個体が上下動は少ないのに、高所にいる割合が大きいことから,本研究では,「なぜ高所をよく利用するのか」を明らかにすることを目的とした。 私たちは、「日光で暖かいため高所の林冠をよく利用している」「気温が低いときほど日向にいる」と仮説を立て,2020年9月6日,21日,26日の10時30分~11時,12時~15時30分に調査を行った。島を8区間に方位で分け,15分毎瞬間記録で,各区間の頭数、森の表面・内部の頭数,日向・日陰の頭数を記録した。同時に,日向と日陰で木板のデッキ・葉・地面の表面温度、気温を計測した。各時刻の太陽の高度・方角を計算サイトで調べた。結果,リスザルの全頭数に占める日向の頭数の割合は13%,日陰の頭数の割合は31%。気温の平均値は日向29.0°C,日陰28.3°C。 日向と日陰の温度差はあまりなかった。葉の表面温度の平均値は日向29.2°C,日陰26.1°C で差がみられた。 気温(日向)と日向の頭数には相関はなかった(0.13)。 方角は東~南~ 西の範囲にいることが多かった。今回の3日間の気温( 日向 :24.2°C ~35.3°C) では,リスザルが日向を好むわけではないとわかった。昨年9月の老齢個体の調査(2019/9/24) において高所の割合が大きかった(0.49%) ので,温度や日光以外の理由も考えたい。

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© 2020 日本霊長類学会
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