霊長類研究 Supplement
第37回日本霊長類学会大会
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口頭発表
相同モデル理論によるミャンマー産大型ホミノイド肘化石の形態解析
高井 正成中務 真人江木 直子河野 礼子浅見 真生
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p. 26

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抄録

ミャンマー中部の後期中新世初頭の地層から発見された大型ホミノイドの上腕骨化石(IR-5555)の形態を、相同モデル法を使って現生大型類人猿と比較解析した結果を報告する。IR-5555 はオスのゴリラ大の右上腕骨遠位端の化石で、現生大型類人猿と同様に糸巻き状の滑車を持ち、その前面上縁稜には深い切痕があり、小頭が球形に近い。本研究では、このIR5555 と現生大型類人猿(ゴリラ・チンパンジー・オランウータン)の上腕骨遠位端のキャストを作成し、3次元スキャナーで撮像して3次元データにした上で、専用のソフトウェア(HBM-Rugle、メディックエンジニアリング社、mHBM・HBS、産総研)を用いて相同モデル理論による形態解析を行った。相同モデルとは「同一点数・同一位相幾何構造で解剖学的対応のついた形状データ」であり、表面形状の全体的な比較をする際に有効である。本研究ではIR-5555の肘関節とその周辺部の表面形状がどの現生大型類人猿と最も似ているのかを主成分分析で解析した。その結果、第1主成分ではオランウータンとアフリカ類人猿の間に明確な違いが得られ、IR-5555 はアフリカ類人猿の範囲に含まれた。さらに第2主成分以下でもオランウータンに近い結果は得られなかった。 ミャンマーの大型ホミノイド肘化石の形態は現生のオランウータンとは違うロコモーションの可能性を強く示唆している。

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