霊長類研究 Supplement
第37回日本霊長類学会大会
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口頭発表
ニホンザルにおけるマイクロウェアの地域および季節間の比較
平田 和葉久保 麦野高井 正成
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p. 26

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抄録

動物の歯は摂食行動において食物を咀嚼する役割を果たすため, その咬合面には食物によってつけられる微細な摩滅痕 (マイクロウェア) が残る。マイクロウェアの形状や深度等は摂食した食物の物性に強く影響を受けるため, マイクロウェアの分析により食性の推定が可能である。本研究では, 各地域の食性データが長年蓄積されているニホンザルを対象として, マイクロウェアと各地域個体群の食性との相関性を検討し, マイクロウェア解析による食性推定の手法を検討した。具体的には, 霊長類研究所に保管されている下北, 金華山, 幸島, 屋久島各地で採集された野生ニホンザルの骨資料からそれぞれ10個体前後を選定し, 上顎第2大臼歯から歯科用シリコンを用いてモールドを作成し,共焦点レーザー顕微鏡 (vk-9700) を用いて咬合面の三次元座標データを取得した。このデータを表面性状解析ソフトウェア (MountainsMap) で解析し, 表面粗さパラメータ (ISO25178及びSSFA) を用いて地域間及び季節間の比較を行った。その結果, 下北集団とその他の地域個体群間において, 多数のパラメータで有意差が認められた。下北集団のマイクロウェアは「高さ」及び「ボリューム」を表すパラメータが総じて低い値をとっており, 咬合面の起伏が小さくなだらかな形状をしていることが分かった。一方, 金華山-幸島-屋久島集団の間に有意差はほとんど検出されなかった。 下北集団内での季節間の比較においても有意差は検出されなかった。以上のことから, 下北の地域個体群はニホンザルの中でも特徴的なマイクロウェアを持っていることが示された。この特徴が下北集団における独特な樹皮食などと関連しているかを慎重に検討する必要がある。今後は下北集団に類似した食性を持つ白山の地域個体群のデータを収集し, 比較を行う予定である。

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