主催: 日本霊長類学会
会議名: 日本霊長類学会大会
回次: 37
開催地: オンライン開催
開催日: 2021/07/16 - 2021/07/18
p. 31
異種の群れが一緒に移動する混群は,アジアの霊長類ではほとんど報告がない。混群がないことを定量的に示した研究は,唯一インドからのものがあるだけである。ボルネオ島,ダナムバレーの5種の昼行性霊長類(オランウータン,ボルネオテナガザル,レッドリーフモンキー,カニクイザル,ブタオザル)を対象にして,異種間の出会いについての資料を収集した。25か月間,9.9kmの調査路を繰り返し合計1544.3km歩くルートセンサスを行うとともに,レッドリーフモンキーの行動観察を行った。出会いの頻度と継続時間が,帰無仮説から予想される値と有意に異なっているかどうかを検討した。センサス中に373回霊長類を発見し,そのうち100メートルごとに区切った同じ区間の中で2種の霊長類を発見した事例は6回にすぎず,これは帰無仮説からの期待値と有意な差はなかった。レッドリーフモンキーの追跡中,テナガザルとの出会い頻度は帰無仮説の期待値より有意に低く,オランウータンとの出会い頻度は非結実期のみ帰無仮説の期待値より有意に高かった。出会いの継続時間は,追跡時間の6.4%にすぎず,オランウータンとの出会いのみ,継続時間が帰無仮説の期待値より有意に長かった。レッドリーフモンキーは,異種と出会う際に,遊動速度や移動の角度を変えなかった。レッドリーフモンキーとオランウータンが非結実期に一緒にいるのは,積極的に出会おうとしているのか,同じ食物パッチに独立に集まってきているのか,本研究の方法では区別ができない。 結論として,この霊長類群集には,積極的で長時間持続する混群は存在せず,いくつかの種の組み合わせで,互いに避けあっていることが確認された。