霊長類研究 Supplement
第37回日本霊長類学会大会
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口頭発表
チャイロキツネザルの種子散布効果:大型散布体樹木2種における散布後運命のモニタリングによる検証
佐藤 宏樹
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p. 31

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抄録

被食動物散布型の大きな散布体をもつ植物は大型果実食者に種子散布を依存しているが,死亡率が高い実生定着段階における散布者の効果を検証した研究はまだ少ない。本発表ではマダガスカル北西部の熱帯乾燥林における最大の果実食者・チャイロキツネザル(Eulemur fulvus)だけに種子散布を依存する樹木2種(センダン科Astrotrichilia asterotrichaとウルシ科Abrahaia deflexa,以下AA およびAD)を対象に,落下もしくは散布された種子の状況を実験的に林内で再現し,散布後のキツネザルによる種子散布効果を考察する。母樹の樹冠下に果肉付きの散布体20 個を置いた50cm四方の区画(落下条件),母樹より20mおよび100m離れた地点に果肉を除去した散布体5個を置いた区画を2ヵ所ずつ設置した(短距離・長距離散布条件)。AA 10個体600個およびAD 8個体480個の散布体から発芽する実生を2年間記録した。散布体密度,母樹や同種結実木からの距離,実験区画上の林冠開空度を説明変数とし,実生の定着に与える影響を検証した。AAの散布体は保護構造が発達しており,発芽前の捕食はほとんどみられなかった。雨季に小型の地上子葉が展開すると多くの実生が食害で消失したが,林間開空度が大きい区画では定着率がわずかに高かった。一方,保護構造のないADの散布体は母樹下で深刻な食害を受けたが,結実木から離れ,低密度で散布体を設置した区画では急速に成長した実生が高い確率で定着した。 果実生産に対する持ち去り率(AA 59%,AD 26%)を考慮した実生定着率は,最初の雨季においてAD (6.5%)のほうがAA(1.5%)を上回った。AAはチャイロキツネザルに多くの種子を持ち去られ,その一部が光条件の良い場所に運ばれることで一定数の新規加入を実現していると考えられる。一方のADはキツネザルによる持ち去り率は低いものの,母樹からの逃避サポートを受けた少数の実生は高確率で定着できていると考えられる。

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