霊長類研究 Supplement
第37回日本霊長類学会大会
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口頭発表
野生ボノボの産後不妊期中の発情再開時における性ホルモンや行動の変化について
橋本 千絵リュ フンジン毛利 恵子清水 慶子坂巻 哲也古市 剛史
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p. 33

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抄録

実効性比(operational sex ratio: OSR)に偏りがあるとき,繁殖機会を巡って競争が起きる。出産間隔が長く,非季節性の繁殖を行うチンパンジーでは,OSRは極端にオスに偏っており,これがオスの激しい攻撃行動につながっていると考えられている。一方,チンパンジーと同属のボノボでは,出産間隔などはチンパンジーとほとんど変わらないが,産後の不妊期に発情再開することでOSRが低下し,集団内および集団間でのオスの攻撃的な競争行動は少ない。本研究では,コンゴ民主共和国のワンバの野生のボノボのメスを対象に,産後の不妊期間中の性皮最大腫脹(MS)の再開と交尾,尿中のエストロゲン代謝産物濃度(E1C)の変化について分析を行った。その結果,MSの日数割合と交尾回数は,産後不妊の初期段階から着実に増加し,MSの日数割合は次の妊娠まで増加し続け,交尾回数は産後約42〜48カ月で最高レベルに達した。また,MS中のE1C濃度も早い時期から増加し,出産後約42~48カ月で最高レベルに達した。 これらの結果から,ボノボのメスは,通常は出産後 49.7カ月まで妊娠しないが,授乳期の早い段階でE1C濃度が低い状態で性皮最大腫脹と発情を再開することが示唆された。

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© 2021 日本霊長類学会
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