霊長類研究 Supplement
第37回日本霊長類学会大会
会議情報

口頭発表
日本における外来マカクの群れの分裂と合流及びメスの群れ離脱と加入
白井 啓高野 彩子鳥居 春己萩原 光川村 輝清野 紘典岡野 美佐夫杉浦 義文川本 芳ほか 和歌山タイワンザルワーキンググループメンバー
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p. 34

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抄録

ニホンザルにおいて群れの分裂は各地で確認されているが群れの合流はほぼ報告がなく,メスの群れからの離脱や他群への加入は,報告はあるが普通は生涯出自群を離脱しないと言われている。ニホンザルとその近縁種タイワンザルあるいはアカゲザルとの2つの交雑個体群で群れの合流,メスの群れからの離脱及び他群への加入が確認されたので報告する。 1999-2013年和歌山県北部に野生化していたタイワンザル個体群(最大4群,2004年),2005-2017年千葉県南端に野生化しているアカゲザル個体群(最大17群確認,2016年)において電波発信器あるいはGPS首輪を群れ毎に1-10数頭のメスに装着し群れの位置及び群れの分派,分裂をできる限り把握した(和歌山県・千葉県・環境省事業含む)。和歌山では自動撮影カメラ等で未知の群れの有無を把握し,千葉では発信器未装着群を確認したら記録した。和歌山) 群れ数は1999年調査開始当初2群(計170-200頭) で,捕獲により個体数は減少したがそれぞれ分裂し 2004年に4群(計50-80頭)となり,1群が消滅し3群になった後,群れの合流が2回あり最後は1群となった。群れの合流は2群のGPS首輪装着個体の個体間距離が同一群であると判断できる程度になり継続したことで判断した。最初の合流は平均27m,2回目の合流は平均59mであった。発信器装着のオトナメスが群れを離脱し単独行動し別群に加入したことも確認した。千葉)2006-2017年の間に群れの分裂を10回,群れの合流を3回確認した。メスの群れからの離脱と単独行動あるいは分派行動の後,別群に加入したことも確認した。個体数増加,食物不足,捕獲によって群れのまとまりが不安定になり分派や分裂が起きることがあるが,群れの合流,メスの群れからの離脱や他群への加入は,平常時に発揮されることは稀でも,大量捕獲,食物不足や感染症などによってサルの社会情勢が不安定~緊急事態に陥った時に安定を求める手段として発揮される習性と考える。

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