主催: 日本霊長類学会
会議名: 日本霊長類学会大会
回次: 37
開催地: オンライン開催
開催日: 2021/07/16 - 2021/07/18
p. 40
動物の社会組織の潜在的な構造を推論することは,動物生態学の重要課題である。普段は3次元的空間配置の中で暮らしている動物において,林床の遊動時や道路・森林ギャップ間を通過する際などに,それが一列に並ぶ配列になることがある。この隊列構造は,社会構成員の社会的関係を反映する特徴的な空間形成であり,隊列の順序を解析することはその種が持つ社会構造を理解する鍵となる。本研究では,野生のベニガオザル集団の隊列移動における通過順序のパターンを,自動撮影カメラの映像データから分析し,社会集団構造の復元を試みた。通過順序から状態遷移を解析した結果,アカンボウを連れた母親がオトナオスの後をついてくる,若いオス個体がオトナオスの後をついてくる,隊列の末尾はオトナオスである,といった規則性が見られ,特にオトナオスの順序位置に特徴が認められた。隊列順序から推定した集団構造と,過去の行動データとを照らし合わせた結果,交尾独占度の高いオスはメスと一緒に,交尾独占度の低いオスはメスから隔離されたまとまり構造として分類されていた。これらの結果から,ベニガオザルは社会的関係性に依存した規則的なパターンで遊動していること,それは特にオトナオスの空間的な位置関係に反映されていることが明らかとなった。