主催: 日本霊長類学会
会議名: 日本霊長類学会大会
回次: 37
開催地: オンライン開催
開催日: 2021/07/16 - 2021/07/18
p. 42-43
東南アジアに生息する大型類人猿のオランウータンは野生下での出産間隔が6~9年(平均7.6年)であり,霊長類の中で最長である(van Noordwijik et al. 2018)。2017年の日本霊長類学会における我々の発表では,オランウータンは少なくとも栄養状態が悪い時に初期流産している可能性は非常に低いことを報告した。本研究では,2019年に発生した2度目の大規模な一斉果実季の前後のデータを追加し,次の3つの仮説を検証した:(1)もともと(同じ土地を利用している)雌の妊娠が同調しており,一斉結実期にタイミングが合う場合も、合わない場合もあるのか、(2)雌は果実生産量が上がった後に妊娠するのか、(3)果実生産量が上がる前に妊娠しているのか(果実生産量の上昇をあらかじめ予測しているのか)。調査地はボルネオ島マレーシア領サバ州ダナムバレイ森林保護区内のダナム川の両岸2km2の一次林で,2005年3月~2020年3月に計180ヶ月間,毎月平均15日間,オランウータンを探索及び追跡し,直接観察により妊娠の有無を記録した(陰部の腫脹によって妊娠を判別し,ヒト用簡易尿検査キットも補助的に用いた)。また1ヶ月に1回計11kmの調査路を歩き,落下果実量を調査した。その結果,7頭の雌の妊娠12例中9例が,2010年(5例)と2019年(4例)の大規模な一斉結実季があった年に観察され,それ以外の年の妊娠は3例のみだった。3例中2例は小規模な 一斉結実があった年に妊娠しており,残り1例は出産直後に第一子を失った雌の2回目の妊娠であった。 また2019年の一斉結実期の妊娠のタイミングは,ほとんどが一斉結実期前だった。以上により,仮説(1),(2)は否定され,仮説(3),すなわち雌の妊娠は果実生産量が上がる前に成立することが支持された。 発表では,一斉結実を予測している可能性やその方法について考察する。