主催: 日本霊長類学会
会議名: 日本霊長類学会大会
回次: 37
開催地: オンライン開催
開催日: 2021/07/16 - 2021/07/18
p. 45
飼育下においてニホンザルMacaca fuscataは攻撃の頻度や強度が野生より高いことが多いとされる。 飼育施設によってはその攻撃が特定の個体に集中していることもあり、場合によってはケガを負うこともある。それに対し、この問題を環境エンリッチメントの導入により改善しようとする取り組みが試みられている。そこで本研究では飼育下ニホンザルの攻撃行動を軽減する手法を明らかにすることを目的に、 3種類の環境エンリッチメントの効果を比較した。実験対象は弘前市弥生いこいの広場で飼育されているニホンザル10個体とした。①コントロール、②展示場内上部へ消防ホースと枝葉を設置、③展示場外部へフィーダーを設置、④展示場内床部へワラに混ぜ込んだ餌をトロ舟に入れて設置の4条件で、それぞれ6日間ずつ連続して観察した。身体の接触を伴う攻撃を「激しい攻撃」、身体の接触を伴わない突進や威嚇を「軽い攻撃」、攻撃的ではない接近に対して距離を取る行動を「回避」とし、それぞれの生起回数を記録した。③において①と比較して激しい攻撃が減少した。③は展示場の外部にフィーダーが設置されているため餌を入手するのが最も難しい。また設置数も多く、個体間の距離を分散させる効果も高い。そのため激しい攻撃の減少が最も顕著であったと考えられる。また全ての環境エンリッチメント条件で①よりも回避が減少した。回避はケガへ到る攻撃行動につながるとともに、回避個体がストレスを感じている表れでもある。環境エンリッチメントの導入によりストレスを低下させることができていた可能性がある。本研究の結果から、適切な難易度と数の環境エンリッチメントを導入することで、飼育下ニホンザルにおける群れ内での攻撃行動を軽減することができることが明らかとなった。