日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第55回大会・2012例会
セッションID: B3-2
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第55回大会:口頭発表
教員養成課程における実践的指導力の検討
―模擬授業を通して習得される資質能力の分析―
*青木 幸子
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抄録
<目的>
  1997(平成9)年、教育職員養成審議会は第一次答申「新たな時代に向けた教員養成の改善方策について」において、「細分化した学問分野の研究成果の教授」が過度に重視されていることを批判し、教科教育法や教育実習の単位増を盛り込んだ改革案を提示し、養成課程において「実践的指導力」を育成することの必要性を強調した。また、2006(平成18)年、中央教育審議会は「今後の教員養成・免許制度の在り方について」の答申において、「教職実践演習」の導入や教職大学院の設立について提言している。このように近年の教員養成政策には、養成段階において即戦力としての完結された指導力が強調されており、養成・採用・研修の各段階で主に育成することが期待される能力との継続性や関連性を再吟味する必要性を痛感させる。こうした動向は、自治体が主催する「養成塾」等の養成基準とも通じるものがあり、大学における養成との間に実践的指導力をめぐるダブル・スタンダードの存在を推測せざるを得ない状況となっている。
   政策の基本軸である実践的指導力とはどのような能力か、それはいつ・誰が・どのように育成することが適切か、養成・採用・研修段階での調整・連携はどのように図られるのか等についての共通認識が必要である。教員の職能成長を図るための課題に応えようとこれまで夥しい数の提言や研究報告がなされてきた。筆者は、養成も研修も真に教員の職能成長を支え、促進し、子どもの学びに還元される能力として止揚されるものでなければならないと考えている。
   本稿では、教員養成における力量形成研究の一環として、「教科教育法」で学生が体験する模擬授業の分析を通して、そこで育成される資質能力の傾向を把握し、養成課程において育成すべき実践的指導力の内実について検討することを目的とする。
<方法>
1. 対象者:T女子大学「家庭科教育法Ⅲ」履修者58名
2. 調査時期:平成23年度後期授業期間中の10月~1月
3. 研究方法:
 *模擬授業とは、グループ単位での題材・教材開発、学習指導案の立案、模擬授業の実施、授業批評のすべてを指す。
*授業批評シートの31項目について、学生の自己評価の結果を分析する。
*それを文科省の「教員に必要な資質能力の指標」に対応させ、模擬授業で育成される能力の傾向を明らかにする。
*さらに、教員の力量診断結果とも対比しながら、養成段階で育成すべき実践的指導力の内実について検討する。
<結果と考察>
1.資質能力指標に基づき項目を「教材分析力」「授業構想力」「教材開発力」「授業展開力」「表現技術」の5つに分類し、模擬授業による実践的能力の習得状況を分析した。平均値が高かった指標は「教材分析力」「授業構想力」であり、低かったのは「授業展開力」「教材開発力」「表現技術」であり、グループによるばらつきが見られた。
2.模擬授業全体を通しての「授業展開の説得力」は「教師の専門的力量」との相関が強く、「生徒の理解度」にも大きく影響する傾向が見られた。
3.そこで、資質能力指標の5分類について「生徒の理解度」との関係を見ると、「教材分析力」「授業構想力」「教材開発力」が生徒の理解度と相関が強いことが認められた。
4.教員の力量診断結果との比較により、養成段階では教科のねらいと社会の課題を認識し、それを教材化できる高度の資質能力の開花に繋がる能力を育成することの重要性を確認した。
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© 2012 日本家庭科教育学会
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